「TikTok」と安保

8/7熊日朝刊「射程」

音楽に合わせた15秒程度の短い動画が簡単に作れる、中国発の動画同行アプリ「TikTok(ティックトック)」への風当たりが強まっている。

トランプ大統領が7月末、米国内での使用を禁止する考えを表明。その後、米企業による買収交渉を容認したが、「9月15日までに成立しなければ運営を禁止する」と強気の姿勢を崩していない。インドでは既に禁止され、日本でも自民の議員連盟が利用制限の議論を進めている。

背景には、安全保障上の脅威がある。といっても、アプリ自体が危険なのではない。中国はインターネット安全法や国家情報法で、企業に国への協力を義務付けており、米国だけで1億人、世界で8億人とされる利用者の個人情報が中国政府に流れることを警戒しているのだ。

アプリの運営企業は「求められても提供しない」と反論。中国国内向けアプリ「抖音(ドウイン)」と分けて運営し、最高責任者(CEO)に米ウォルト・ディズニーの元有力幹部を登用するなど独立性を訴えてきたが、疑念は払拭(ふっしょく)されていない。要は中国という国を信用できない、ということだろう。

米政府の標的はティックトックだけにとどまらず、中国企業による通信事業の包括的な制限を目指すという。ハイテク大手の華為技術(ファーウェイ)を排除した時と同様、他国に同調を求めている。関連記事「米政府 中国5社取引禁止へ」

日本は今回も米国に追随するのだろうか。国内では、若い世代を中心に950万以上がティックトックを利用している。定着したサービスを手放すのには抵抗もあろう。

国同士の信頼関係がなくてはグローバル化は成り立たない。優れたモノやサービスを、提供国に限らず世界のだれもが享受できる国際協調の道はないものだろうか。理想論といわれそうだが、理想を追い求める世界であってほしい。