菅政権が挑む、国内6つの課題

参考:9/17日付け熊日朝刊

船出した菅内閣には課題が待ち構える。新型コロナウイルス感染拡大で落ち込んだ経済の立て直し、米国と中国の対立への対応など待ったなしだ。「国民の為に動く」と宣言した菅義偉首相の実行力が試される。

菅内閣の主な政策課題

経済政策・新型コロナで傷ついた日本経済の再建
・財政健全化の目標の達成に向けた道筋
・2%の物価上昇目標達成とデフレ脱却
外交/安全保障・米中対立への対応やトランプ米大統領との信頼関係構築
・北朝鮮による日本人拉致問題とロシアの北方領土交渉
・敵基地攻撃能力の保有をめぐる議論
防災/地方創生・地震と感染症拡大が同時に起きる「複合災害」への備え
・「国土強靭化」緊急対策の延長
・東京一極集中の是正
社会保障・75歳以上の人の医療費窓口負担を2割に引き上げ
・不妊治療の保険適用拡大
・来年度に介護、障害福祉の報酬改定
雇用・新型コロナ禍の雇用対策
・フリーランスの労働者保護
・最低賃金引き上げなど非正規労働者の待遇改善
震災復興・放射性物質を含む原発処理水の処分
・帰還困難区域の解除時期や除染方法
・地域産業の再生や被災者の心のケア

経済

景気落ち込み再建急務

新型コロナウイルスで傷ついた日本経済の落ち込みが急務だ。企業活動はコロナ前の水準に遠く及んでおらず、再流行の懸念が続く中で景気浮揚と感染対策の両立が課題となる。

経済活動の縮小で相次ぐ企業の倒産や失業は、景気低迷の長期化につながりかねない。年末に向けて2021年度予算編成とともに、20年度第3次補正予算を編成するかどうかが焦点となる。

一方、経済対策を含む2度の補正予算で財政状況は一段と悪化した。25年度の財政健全化目標の達成は困難な状況で、財政立て直しへどう道筋を付けれるかが問われる。

前政権が掲げたデフレ脱却も積み残された課題だ。2%の物価上昇目標を掲げた日銀の金融緩和策は手詰まり感が漂うが、新政権の下でも維持される見通しで、超低金利の長期化による弊害への目配りも必要になる。

外交・安全保障

「米中冷戦」対応が焦点

外交分野では、新型コロナウイルスの影響で外国との往来が制約を受ける中、効果的に「菅外交」を展開できるかどうかが焦点となる。最重要課題の一つは「新冷戦」の様相を呈する米中対立にどう向き合うかだ。展開次第では、両大国の間で板挟みになる可能性がある。

対米外交は、トランプ大統領との信頼関係を築けるかどうかに注目が集まる。11月の米大統領選をにらみながらの対応が求められる。対中国では、保守層を中心に反対論が広がる習近平国家主席国賓来日の扱いに苦慮しそうだ。北朝鮮による日本人拉致問題と、ロシアとの北方領土交渉も重くのしかかる。日韓関係も改善の兆しが見えない。

安全保障政策では安倍晋三前首相が「年内に方策を」との談話を出した敵基地攻撃能力保有の是非や地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の代替案が難題だ。

防災・地方創生

巨大地震の備え 道半ば

南海トラフや首都直下などの巨大地震対策が急がれる。津波避難施設や住宅耐震化などハード強化は道半ば。さらには新型コロナウイルスなどによる感染症が同時に起こる「複合災害」への懸念が高まっており、感染症防止対策や医療体制の整備も必要となっている。

インフラを強化して災害に強い国づくりを目指す「国土強靭化」は、総事業費約7兆円の3か年緊急対策が本年度で終わる。与党や自治体は5年間の延長を要望しており、来年度以降の扱いが焦点となる。

看板政策の「地方創生」では東京一極集中の是正を掲げるが、人口集中は加速し、思うような成果が出ていない。ただコロナ禍で地方移住への関心が高まっており、テレワーク推進などで地方に人を呼び込み、局面を打開できるかどうかが問われる。

社会保障

不妊治療の支援拡大も

医療や少子化問題などを議論する全世代型社会保障検討会議を中心に、社会保障の改革を進める。安倍内閣時代に2022年度までに一定の所得がある75歳以上の人の医療窓口負担を現在の一割から2割に引き上げる方針を決めている。年末に向けて、どれくらい所得のある人を引き上げ対象にするかの線引きが焦点となる。

菅義偉首相が自民党総裁選で訴えた、不妊治療への支援拡大も議論される見通し。現在、一部の治療を対象にしている助成金制度と、公的医療保険の適用をどこまで広げるかを検討する。

また、来年度には介護保険と障害福祉サービスの公定価格を見直す「報酬改定」が控えている。新型コロナウイルス感染症の影響で現場の負担は増しており、報酬増を求める声が強まりそうだ。

雇用

コロナ影響 失業率悪化

新型コロナウイルス感染拡大の影響で悪化する雇用情勢の改善も目指す。完全失業率は今年に入って上昇に転じ、7月には2.9%にまで悪化。完全失業者数も200万人の大台に迫った。

政府は、雇用維持を目的とした雇用調整助成金の対象を緩和するなど特例を大幅に拡大した。特例は年末まで延長したが、年明けに縮小する方針。ただ、縮小の方法やタイミングによっては失業者を増やすリスクがあり難しい判断が迫られる。

コロナ禍で、政府が推進するフリーランスの働き方には法的保護が不十分な実態が明らかとなった。けがの補償が受けられるよう労災保険の対象を拡大するなど保護策づくりを進める。

非正規労働者の待遇改善も課題で、景気悪化の影響で本年度足踏みした最低賃金の引き上げを来年度以降、大幅増額できるかどうかも焦点だ。

震災復興

原発処理水 22年に満杯

来年3月で発生から10年となる東日本大震災。過去事故を起こした東京電力福島第一原発では、放射性物質を含む処理水が増え続けている。貯蔵タンクは2022年夏ごろに満杯になるとされ、与党や地元自治体から早期に処分方法を決めるよう迫られている。

福島県7市町村に残る帰還困難区域は、22~23年の避難指示解除を目指す「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)で除染が進む。一方、大部分を占める復興拠点以外のエリアは解除の時期や除染方法が決まっておらず、地元は具体策を示すように求めている。