米大統領選後の世界の行方

いつもお世話になっております。熊日の小出です。先日、共同通信客員論説委員の会田弘継(あいだひろつぐ)氏の講演会に伺いました。テーマは「米大統領選後の世界の行方」という少し難しい内容でしたが、私なりにまとめましたのでよろしければご覧になって下さい。

引用資料:11/26 日経朝刊

☆ポイント

  • バイデン民主党は歴史的な敗北を喫した
  • 高卒以下の白人と若年層が政治混乱を招く
  • 日本は米国に加え多国間での協力を進めよ

▽バイデン民主党は歴史的敗北を喫した

今回の米大統領では民主党のバイデン氏が現職の共和党トランプ氏を破り勝利をほ確実にしました。しかし、今回の選挙は過去を振りかえると「民主党の歴史的敗北」といえます。

米国の新型コロナは死者、感染者ともに世界最多、実質的失業率が25%という現在進行形で大不況に見舞われています。米国の新型コロナの死者24万人とは、ベトナム戦争死者の4倍以上でそれをたった数ヶ月で失いました。

不況の中で再選を狙った大統領は過去にもいましたが、みな大敗しています。そんなトランプ大統領に、僅差の勝利に終わった民主党バイデン氏は「歴史的敗北」に近いのではないでしょうか。

うらを返せば「トランプ恐るべし」ということです。なにしろ、トランプ氏は7200万票も獲得しており、過去最多得票である08年オバマ大統領の得票数6900万票を上回り、今でも多くの人がトランプ氏を支持している事がわかります。

▽高卒以下の白人と若年層が政治混乱を招く

もう少し結果を深堀りすると、出口調査に特徴的な点があります。前回(2016年)に比べ民主党は高卒以下の白人からの投票率を3ポイント伸ばしています。

この層は前回ラストベルト(さびた工業地帯)3州(ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン)を僅差でトランプ氏支持に傾け勝利しましたが、今回はこの3州はバイデン氏が勝ち取りました。

もう一点は、若者の動きです。バイデン氏は前回のクリントン候補に比べ、18~29歳以下の年齢層の得票率でも5ポイント伸ばしました。この層は、民主党代表を決める予備選で圧倒的な支持を得たサンダース上院議員を推薦した若者層と重なりバイデン氏に投票した事の裏付けとなります。

前回の選挙では若者たちが選挙を棄権したことでクリントン氏敗因の要因とされています。このように高卒以下の白人の白人と若年層の投票がバイデン氏勝利の大きな要因となっています。              

一方では、学歴による所得格差と世代間格差で負の側に置かれ(表面グラフ)政治に怒りをぶつけ変革しようとしています。

米国は学歴格差、世代間格差が年々広がっている

今回、高卒以下の白人からの投票をバイデン氏が伸ばし、勝利を決定付けました。しかし、出口調査でこの層はトランプ氏の支持が大きく上回り約7割となっています。この層が中心のトランプ支持者は、民主党が掲げる「大きな政府、自由貿易、国境開放」を嫌ってます。

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なぜなら、イラク、アフガニスタンの戦争で政府に無駄に駆り出さたと考え、経済グローバル化や積極的な国際主義に否定的でトランプ氏が掲げていた「アメリカ第一主義」に賛同しています。

彼らは70年代以降の産業構造の変化の中で製造業を追われ、学歴差により激しい所得格差が生まれるサービス産業中心の経済の中で底辺に置かれています(下図左)

2020.11.20 日本経済新聞

また、若年層に圧倒的な支持を得たサンダース氏の票を獲得し、今回の選挙に勝利したバイデン氏ですが若者層には「社会主義」的な政策に期待しています。社会主義とは、簡単にいうと「みんな平等で貧富の差がない社会」です。

11月の世論調査でも23~38歳の世代では49%が社会主義という言葉を好意的にみています。

また、40年代生まれは9割が親の所得を超えていますが、80年代生まれ以降は半数にとどまっています。現在50代後半以上のベビーブーマー世代と40歳以下のミレニアル世代には激しい資産格差が生まれ、「消えゆくアメリカンドリーム」と言われてます(上図右) 。こういった背景から米国の若年層は「平等な社会」を求める傾向があると考えられます。

新政権でも基調は「自国第一」

このように、学歴格差や年代別格差など様々な問題を抱えた米国ですが、自らを勝利に導いた彼らの要求にバイデン氏も応えなければいけません。裏を返せばトランプ氏が掲げていた「自国第一主義」を基調にバイデン氏は動かざるをえないという事になります。

日本は米国に比べ多国間との協力を進めよ

日本を含む、国際社会はトランプ政権の異常な米国第一外交に振り回された後、バイデン政権で国際協調外交が戻ると期待しています。温暖化対策の「パリ協定」への復帰など一定の正常化は見れます。

しかし、国際状況を考えれば米国第一主義が続きます。トランプ時代にはじまったことでなく「世界の警察官」を放棄したオバマ時代から続くながれとなっています。

日本の当面の課題として在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)の増額が報道されています。テレビやネットでは日本に負担をさせすぎている、下げるように要求すべきだというような論調が多いですが(図1)日本の国を守るために使われる軍事費は対GDP比割合でみると諸外国に比べ大幅に低くなっています。(図2)

図1
↑ 軍事費の対GDP比(2019年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国)(2019年)
↑ 図2:軍事費の対GDP比(2019年時点の米ドル換算で軍事費上位10か国)(2019年)

だからといって、「駐留費負担を上げてもいい」ということではありませんが、「アメリカ頼み」は事実なのです。今後の米国は引き続き「自国第一」を継続していくと思われます。日本はそういった内向きの米国と同盟強化を図る道しかありません。

大統領選は単純なバイデン氏の勝ちだけではなく、「米国がどのように変わっていくか」を注目すべきです。そして日本は、そういった米国が大きく変わる中でいかに他国との協力を図り「なんでもアメリカ頼み」の現状から脱出する必要があるのではないでしょうか。