社会保障の最終報告まとめ

12/21 熊日社説から

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政府の全世代型社会保障検討会議は、社会保障制度の維持を目指す最終報告をまとめた。団塊の世代が75歳以上になり始める2022年に向け、少子化対策の拡充と、高齢者医療における現役世代の負担軽減を柱に位置付けた。

 同会議の議長を務めた菅義偉首相は「若い世代の負担上昇を抑えることは待ったなしの課題だ」と強調した。高齢者に手厚い社会保障制度を見直し、現役世代にも配慮する道筋を示したことは前進と言える。

 ただ、核心だった75歳以上の医療費窓口負担増は公明党の抵抗で菅首相の当初案から後退し、財政効果は薄れた。収入や蓄えの少ない若い世代の負担感にも、もっと目を向けるべきではなかったか。

 全ての世代を切れ目なく対象とし、全ての世代が公平に支え合うのが全世代型社会保障である。世代間格差を和らげるには、今回の対策では不十分だ。全世代が改革の必要性を改めて認識し、議論を深める契機としたい。

軽減効果は年800円

 75歳以上の医療費は、窓口負担を除き約5割を税金、約4割を現役世代の保険料からの支援金、約1割を高齢者の保険料で賄う。現状のままでは、現役世代の支援金は20年度の6兆8千億円から25年度は8兆2千億円に膨らみ、支えきれなくなる。そうした危機感が改革の出発点だった。

 だが今回の見直しで得られる支援金の軽減効果は、22年度が約740億円、25年度が約840億円で、どちらも全体の1%程度にとどまる。現役世代1人当たりの負担額は25年度に約8万円で、見直しによる軽減額は800円ほど。これでひと安心とはいかない。

 窓口負担を2割に引き上げる対象者の線引きを巡る攻防が最後まで続いたが、若い世代に目を向ければ、平均年収が200万円ほどの20代も原則3割を負担している。こうした実態があまり議論されなかったのは残念だ。

財源の奪い合いに

 少子化対策では、菅首相肝いりの不妊治療について22年度からの保険適用を目指す。それまでの間は、現行の助成制度の所得制限を撤廃し、助成額も増やす。

 待機児童の解消に向け、24年度末までに新たに14万人分の保育の受け皿を整備することも盛り込んだ。その財源を捻出するため、夫婦のどちらかが年収1200万円以上の世帯は、児童手当の特例給付を打ち切る。子育てを社会全体で支えるとの理念に立てば、所得に関係なく給付されるべきであることは指摘しておきたい。

 さらに今後の検討事項として、支給基準となる年収を「夫婦合算」とする案も明記した。共働き家庭が増える中、児童手当の縮小や廃止の対象を広げ、より多くの財源を確保する狙いだが、女性の就労を阻害しかねない。そもそも少子化対策の財源を子育て世帯間で奪い合うのでは、現状を大きく変えることはできない。

 男性の育児休業取得を促す「男性版産休」制度の導入も盛り込んだ。いずれの対策も必要なものだが、それだけで少子化が解決するわけではない。雇用の安定など、結婚や出産をあきらめずに済むような環境づくりも必要となる。

痛み伴う改革必要

 最終報告は「更なる改革を推進する」と結んだ。介護なども含めた社会保障給付費は、高齢者数がピークに近づく40年度に190兆円と18年度の約1・6倍に膨らむ見通し。持続可能な制度とするには、さらに痛みを伴う改革が必要となろう。国民の理解がなければ進めることはできない。

 改革の議論は、関連法改正案を提出する来年の通常国会に移る。公平で適正な負担の在り方はどうあるべきか。国民も方向性を共有できるような具体的な論戦を期待したい。