バイデン大統領就任~脱トランプ国際協調へ

引用:熊日1.22付け朝刊

米大統領選で勝利した民主党のジョー・バイデン氏(78)が20日、ワシントンの連保議会議事堂で宣誓し、第46代大統領に就任した。就任演説で「民主主義が勝利した」と宣言し、新型コロナウイルスの流行や社会の分断という国難を克服するため「全霊を注いで米国を結束させる」と表明。

国境の壁建設を中止するなどトランプ前大統領(74)の看板政策を覆す17の文書に署名し、地球温暖化の枠組み「パリ協定」の復帰を国連に申請した。「米国第一」主義から決別し、国際協調路線への転換に踏み出した。

●民主主義が勝利
●分断は深刻。米国の結束に全霊注ぐ
●過激主義や白人至上主義の台頭に対抗
●新型コロナウイルス危機の克服に決意
●指導者には真実を守る責任
●党派争いに終止符を
●同盟を修復し、世界に再び関与
バイデン米大統領演説骨子

熊日社説「結束」で民主主義再生を

1/22熊日社説

 米国の第46代大統領に民主党のジョー・バイデン氏(78)が就任した。就任演説で「民主主義が勝利した」と宣言。「国民の結束」を繰り返し呼び掛け、40万人を超える命が奪われたコロナ禍や、トランプ政権末期に極まった社会の分断などの困難に正面から立ち向かう姿勢を示した。

 しかし、前途は多難と言わざるを得ない。首都ワシントン一帯は、連邦議会議事堂襲撃事件の余波で厳戒態勢が敷かれた。扇動したとされる前大統領のトランプ氏は式典に姿を見せなかった。目立った混乱はなかったものの、亀裂が深まった中での船出となった。

 演説では「平和的に異議を唱える権利は、この国最大の強み。私を支持しなかった人々のためにも懸命に闘う」とも語りかけた。国民融和の道を根気強く探り、「尊くもろい」民主主義の再構築が可能であることを世界に示してもらいたい。

 バイデン氏は就任初日、トランプ前政権が離脱した地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」への復帰を指示し、国連に受理された。世界保健機関(WHO)からの脱退に向けた手続きの停止も指示し、米国第一主義から国際協調路線への回帰を鮮明にした。トランプ時代の混乱を収拾し、国際社会での指導的役割を取り戻す第一歩となったのではないか。

 軍事力を急速に拡張している中国に対しては、前政権の強硬政策を維持するとみられる。日本をはじめとする同盟国との連携を強化し、対抗していく構えだ。

 菅義偉首相も「日米同盟をさらに強固なものにしていきたい」と強調し、緊密な連携に意欲を示した。今後、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)を巡る日米交渉での増額要求など、さらなる負担や役割の拡大も懸念される。トップ同士にとどまらない重層的な関係を構築する必要がある。

 一方、カマラ・ハリス氏(56)も就任宣誓し、女性、黒人として米国史上初の副大統領が誕生した。高齢のバイデン氏の後継者としても力量が試されるだろう。

 閣僚人事でも、オバマ政権で政府高官を務めた即戦力を起用しつつ、非白人と女性を積極登用した。多様性を重視する政権が確かな結果を残すことを期待したい。

分断解消 日米同盟強化へ

中国抑止米国頼み 日本、負担増に懸念も

日本政府は、バイデン米新政権との関係構築を急ぎ、同盟を強化するとの新体制の具体的な行動に期待する。台頭する中国を抑止するには、アジア太平洋地域への米国の関与が欠かせないからだ。外相や防衛相間の会談実現も模索し、米側の対応を注視する。ただ国内の分断解消など多くの課題を抱える米国への不安は拭えない。日本側には、防衛費の負担増や役割拡大を求められかねないとの懸念もくすぶる。

「新大統領との関係を緊密にしたい」。菅首相は21日朝、バイデン氏への祝意を官邸で記者団に述べる際、「緊密」という言葉を三回繰り返し、個人的な関係構築に意欲を示した。

信頼

日本政府筋は、政権発足前から米側と「以前から知人や友人関係を通じて」非公式に接触し、首脳会談の時期や議題の調整を進めてきたと明かす。

菅政権が米側と重層的に信頼醸成を急ぐ背景には、厳しさを増すアジア情勢がある。中国は沖縄・尖閣諸島周辺の領海侵入をはじめ、強力な軍事力背景に海洋進出を強化。新型コロナウイルスに苦しむ各国に中国製のワクチンを提供し、影響力を拡大している。

北朝鮮の拉致・核ミサイル問題も解決へ進展が見られず、日本単独では中国の軍事拡張や外交攻勢、北朝鮮への対応ができないからだ。

布陣

バイデン政権は中国を「激化する競争相手」(国務長官に指名されたブリンケン氏)と位置づけ、日本を含む同盟国と共に対抗する構図を描く。ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)にはアジア政策などを統括するインド太平洋調整官などを新設。対中政策に政権全体で取り組む姿勢を鮮明にはしている。

だが、感染者数と死者数が世界で最悪の新型コロナウイルスへの対応や、顕在化した人種問題、社会の分断への対策は待ったなし。「当面は国内を優先せざるを得ない」(米当局者)のは明らかだ。

加えてホワイトハウスや国務省の要職には、オバマ政権で対ロシア、イラン外交に関与した元高官らの起用も目立つ。両国への欧州各国の懸念は根強く「トランプ前政権下で傷ついた欧州の同盟国に配慮した布陣」(外交筋)との見方もある。

バイデン氏が気候変動対策に加え、イランやロシアとの核をめぐる交渉など喫緊の課題を横たわる。

「同盟関係を修復し、世界に再び関与する」と明言したバイデン氏が、どこまでインド太平洋地域に力を裂けるかは不透明だ。

一致

バイデン氏は昨年11月の首相との電話会談で、尖閣諸島が米国の防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用外だと明言。同盟国重視や世界保健機関(WHO)からの脱退停止など国際協調主義は、日本の立場と一致する。

だが米議会では、新型コロナによる景気低迷の影響もあり、国内への財政支出増を求める声が強い。日本政府には「同盟国重視と合わせて、応分の負担や役割を求めてくるだろう」との見立てがある。

2021年度以降の在米軍駐留経費負担(思いやり予算)に関し、日本はトランプ前大統領の巨額請求を避ける思惑から、日米交渉を政権移行後に先送りにした。現行の特別協定が切れる3月末までの米側の対応が、今後の日米関係を占う試金石となりそうだ。

バイデン流 普通の米国へ

 バイデン大統領の就任初日、内外の空気が一変した。融和と国際協調を訴える大胆な政策転換により、うそと虚勢で民主主義を脅かしたトランプ前大統領の排他的な国家像は一瞬で過去に。「真実と透明性」(サキ大統領報道官)を前面に、分断された国の再建を誓う史上最高齢の新リーダーは超大国に結束をもたらせるか。4年ぶりに”普通”に戻った新たな米国の一日を追った。

政策転換 初日に次々

トランプ前政権バイデン政権
米国第一主義外交政策同盟重視、国際協調
白人男性重用人事女性や非白人を積極登用
「中国ウイルス」と呼び、感染防止策軽視新型コロナ対応「第一の課題」、対策徹底
分断深化、白人至上の過熱主義台頭米社会国民の結束よびかけ
メディアと対立、SNS多用発信手段初日の会見で「真実と透明性」強調
「温暖化はうそ」、パリ協定離脱気候変動協定復帰へ
米国の新旧政権の違い

 「雇用統計は信じられないほど素晴らしい」。後任の就任式を152年ぶりに欠席し、20日朝に首都近郊の米軍基地で極めて異例の「退任式」を強行した共和党トランプ氏。4年前の自身の就任式と同じ赤いネクタイ姿で、戦後唯一任期中に雇用が減った真実を無視し、最後まで空威張りを続けた。

世界最多の新型コロナ感染者と死者を抱える米国。集まったトランプ支持者の大半がマスクなしだ。「感染者は劇的に減る」「ありきたりな政権ではなかった」。寒空にむなしく声が響く。

笑い

「全く不正確だ」。トランプ氏にツイッターでいじめられ続けたメディア各社はやり返すかのように、やゆしながら報じた。南部フロリダ州に飛び行く大統領戦闘機を映した”天敵”CNNテレビは、基地で流れたフランク・シナトラの別れの名曲マイ・ウェイを大音量で放送。「わが道を生きてきた」との歌詞に記者らから笑い声が漏れた。

全霊

マスクなしの人は見当たらない。トランプ氏がフロリダに着いてまもなく、首都の連邦議会議事堂に集まった歴代大統領夫妻や新旧高官らは、共和と民主の党派の垣根を超えて笑顔につつまれた。

「今日、私の全霊は米国を一つにし、人々や国を結束させる事に込められている」

民主党バイデン氏は約20分間の就任演説の多くをトランプ氏が切り裂いた国の融和を求める訴えに割いた。

背後に並ぶハリス副大統領、クリントン元国務長官、ミシェル・オバマ元大統領夫人は、いずれも紫系統の服に身を包んだ。共和党の赤と民主党の青を融合し、国民一丸で国難を乗り越えようとの強い意志がのぞく。

 この日、懸念されたトランプ支持者の過激行動は起きず、重武装で展開した大勢の州兵らは祝福の花火を見上げた。初日から次々と政策転換を打ち出した新政権を各国は歓迎。協力や対話を望む考えを続々表明した。

敵意

 高齢のバイデン氏は一期で勇退するシナリオを描いているともされ、早急に後継者候補を育てる必要がある。現段階での最有力は、同氏が「重要決定に際して必ず最終意見を求める」(同氏周辺)とされるハリス氏だ。

バイデン氏は閣僚人事で経験豊富な元政府高官らを重用する一方、大統領の予備戦で自身と争った党内有力者の起用はほとんどなかった。「ハリス氏のライバルとなり得る人材の台頭を阻む」ためとの観測も出ており、女性、黒人、アジア系初との話題も相まって存在感が増す。

 ハリス氏は20日夜の就任関連行事で「団結し、自分たちや米国を信じよう」と国民を鼓舞。女性の地位向上にも意欲的だが、懸念がくすぶるのはトランプ支持者の動向だ。バイデン氏に近い民主党の重鎮クライバーン下院議員は「人種を理由に今もオバマ元大統領を敵視するトランプ支持者は、今後その敵意をハリス氏に向けるだろう」と警告を発した。

新政権の顔触れ 即戦力重視 

非白人と女性 積極登用

米国のバイデン新大統領は閣僚人事で、非白人と女性を積極登用しつつ、オバマ政権で政府高官を務めた面々を要職に配した。経験や人脈を持つ即戦力を起用した実務型布陣と言える。人種や差別に縛られず、幅広い層の声を取り入れる姿勢を示すとともに、新型コロナウイルスの流行といった難局を乗り切り、国際社会への関与拡大を早急に進める思惑だ。

「よくわかるバイデン政権の顔触れ」日本経済新聞社

【図解】ジョー・バイデン新政権の顔ぶれ
(c)LAURENCE SAUBADU, VALENTINA BRESCHI, JONATHAN WALTER / AFP

 新政権の顔触れは、白人男性が目立ったトランプ政権をは対照的。女性、黒人、アジア系で初の副大統領となるハリス氏を筆頭に、黒人で初の国防長官となるオースティン退役陸軍大将、初の先住民系閣僚として内務長官となる女性下院議員ハーランド氏らが続く。運輸長官に起用されたブティジェッジ氏は、同性愛者と公言している初の閣僚となる。

 米国では人口に対して非白人が占める割合が高まる一方、政府や企業の要職は依然として白人偏重が指摘される。新政権は米社会の多様さを閣僚の顔ぶれに反映させ、人種格差の是正に努める姿勢をアピールする。

 外交面ではトランプ政権下で進んだ国際的な孤立を脱するのが急務。ブリンケン元国務副長官を国務長官に、国務省出身のサリバン氏を国家安全保障問題担当の大統領補佐官に配し、オバマ政権下での両氏の経験を生かして国際協調路線への転換を急ぐ。

トランプ氏は周囲に自身への忠誠心を求めて政権が内向きとなり、高官の解任や辞任が絶えなかった。バイデン氏は「忠誠心を国民や憲法に向けてほしい」と高官に求めており、外向きの政権運営を目指す構えだ。

大型評論:共同通信ワシントン支局長 半沢隆美

米国の理念に真実追加

 米首都ワシントンで20日行われた就任式演説で、バイデン新大統領が「われわれ米国民が愛するのはなんだろうか」と問いかけたのは、理念の国家と呼ばれる米国の根底が揺らいでいることへの危機を意識しているからだ。

 米国の理念とは「自由」や「民主主義」などであり、それへの信頼と愛着が民族や宗教、社会階層の違いを超えて国民意識を育み結束させる働きをする。強大な経済や軍事もこの理念なくしては、長く超大国の地位を維持する原動力とはならなかっただろう。

 問題は理念というものは普遍的な分だけ曖昧で、危うさも抱えていることだ。「民主主義には意に沿わない選挙を否定する自由が含まれる」とゆがんだ解釈をした暴徒が、神聖な連邦議会議事堂を襲った1月6日の事件は、その一例だ。「選挙は盗まれた」というトランプ前大統領の主張を信じ込み、津波のように議事堂に押しよせては破壊し、略奪し、そして大統領選の正式認定手続きを妨害した自称愛国主義者たちの行いは、米国民に未曽有の衝撃を与えた。演説で事件を念頭にバイデン氏は「われわれは民主主義は尊くもろいものだと改めて学んだ」と語った。

こうした事態を招いたのは「選挙は盗まれた」という虚偽の主張の力であったのは明白で、バイデン氏は演説での問いかけに自答し、自由や尊厳、名誉といった伝統的な米国の理念に「真実」を大切な一つとして加えた。そして「われわれ一人一人には真実を守り、うそを打ち破る義務と責任がある」と力説したのだ。

 この問題と並行して、バイデン氏は、政治的過激主義や白人至上主義、国内テロの三つを「敵」と位置付け、「正面から立ち向い、打ち負かす」と宣言した。暴力の根絶と本格的に対峙する姿勢を示したことにはすでに一定の評価がある。

だが、就任式会場の議事堂からホワイトハウスにいたる広大なエリアは鉄柵で完全に封鎖され、内側に限られた数の政府要人や議員らがいるだけ。閉め出された格好の一般市民は式典を遠くに望むことすらできなかった。

 この形式には新型コロナウイルス感染対策の意味合いもあったが、経済格差に苦しみ「政府地に隔絶感」を訴えた人々の不満が、トランプ氏に分断をあおる負の政治的エネルギーを与えたことを思えば、隔離された就任式には違和感も残った。

 選挙不正の陰謀論を唱え続け、バイデン氏就任に反対する人々を、現実に引き戻す過程には危険も伴う。性急で強固な対応は、逆に彼らを実社会やネット世界の片隅に追い込み、白人至上主義をテロに走らせる契機にすらなりかねない。ゆがんだ思想が生む暴力に振り回されない社会をバイデン氏はどう模索するのか。陰謀論が世界に浸透する中、良き先例を見いだすことを期待したい。

バイデン米大統領就任 識者談話

政策の選択決断難しく 早稲田大教授 吉野孝氏

 バイデン米大統領は就任演説の中で新型コロナウイルス禍や経済的不平等、人種差別、気候変動、世界における役割の低下など米国が直面する重要問題を指摘しつつ、国民が希望の下にまとまることを訴えた。しかし、その道のりは険しい。まず新政権は昨年の米大統領選に投票したという事実を認識しなけらばならない。

 もし新政権がトランプ前政権の政策を否定するような行動を取るなら対立はますます深まることになる。他方で、トランプ氏に投票した人々に寄った政策を実施するなら、バイデン政権誕生に大きく貢献した左派勢力から激しい反発を受ける。

 対中政策においても新政権は厄介な問題に直面する。現在、議会では情報管理とテクノロジーに関して中国に強固な姿勢を取る議員が増えているものの、民主党内の左派勢力の中には、中国との全面対決を望まず、気候変動問題も解決には中国との協力が必要と考えられる者がいる。ここでもバイデン氏は大きな決断を迫られることになるだろう。

トランプ支持 衰えない 慶応大教授 渡辺靖氏

 米大統領選で7400票を集め、強さを誇示したトランプ前大統領だが、今月6日の連邦議会議事堂で共和党からも責任追及の声が上がり、潮目は変わった。「議事堂を囲む暴徒」の図はトランプ時代の象徴になるだろう。ただ、世論調査では襲撃後も国民の3割が支持しており、力を失ったわけではない。

 2024年大統領選での復活もうかがいながら、共和党内で特定の政治家を応援し、影響力を及ぼし続けるキングメーカーの座を狙う可能性がある。党内は対立が激しくなるとみられ、まずは上院で始まる弾劾裁判で有罪に賛成するか否か共和党上院議員の動きが見どころだ。

弾劾裁判は「策略にはめられた」「魔女狩りだ」との言説に訴えることができ、トランプ氏には必ずしも痛手ではないという見立てもある。トランプ政権下で自信を深めた白人至上主義者や極右勢力もしばらく地下に潜るかもしれないが、勢力は衰えてないのではないか。

 バイデン大統領は、ワシントン政治を知り尽くした人。超党派的なうまい駆け引きができるか着目したい。

コロナ対策 喫緊の課題 米政治アナリスト ジョン・ゾグビー氏

 バイデン米大統領が就任演説で、大統領選で自身を支持しなかった人々にも人間味を持って団結を呼びかけ、(対立の)痛みをいくらか和らげる効果がったと考える。

 ただバイデン氏は同じ民主党のオバマ元大統領のように切望されて大統領に就任したわけではなく、伸びしろは少ない。2022年の中間選挙も控えており、共和党の協力を得やすい今後100日間で成果を出すことがカギとなる。

 喫緊の課題は、国民への現金給付や中小企業支援のような新型コロナウイルス禍からの人々の救済と経済回復だ。

一方、トランプ前大統領と、同氏を共和党から排除しようとする勢力による党内の闘いにも注目すべきだ。共和党内で争いがあるうちは、バイデン政権に利益をもたらす。

 トランプ氏の共和党内での支持はまだ非常に高いが、影響力を持ち続けるか否かを予測するのは難しい。トランプ氏は(政治活動の)終わりには向かっておらず、親族が連邦議会選で勝利する可能性もある。

議会勢力図 結束に光明 米カリフォルニア大バークリー校名誉教授 ローラ・ストーカー氏

 バイデン米大統領は、就任演説で強調した通り「結束」を取り戻すことこそが自身の使命とみている。(政治的分断という)課題を引き継いで就任した形だが、光明もある。

 上院の勢力が民主党50、共和党50と同数になったことで、民主党は共和党に対して穏健な姿勢で臨む必要が生じ、このことは党内対立を超えた協力を促すきっかけになり得るだろう。連邦議会議事堂襲撃でトランプ前大統領の影響力が低下したことも、(共和党の)中道派が歩み寄りを示すチャンスとなる。

 米国の民主主義は危機を抱えている面もあるが、大統領選での高い投票率は民主主義の活力も示しており、バイデン政権にとっては政治への信頼を取り戻す好機でもある。世界保健機関(WHO)や北大西洋条約機構(NATO)など国際機関との関係強化、多国間主義への回帰が論争を呼ぶことはないとみるが、世界各地の紛争や核の脅威といった問題に新政権がどの程度リーダーシップを発揮しようとするのかは未知数だ。